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雨匣浸

 台所に残された紅茶の缶を見つけて思わず手に取った私に気づき、ハイランドは少し首を傾いだ。
「もしかして、ペンブロークが淹れたかい」
「ええ、美味しかったわ」
 人は見た目によらないのね、と冗談めかすとハイランドはやや苦く笑いながら視線を遠くへと投げる。
「あいつは出来ないことがないからなあ」
「ないの? ひとつも?」
 驚きを隠せず私が問うと、食事の用意を始めながら彼は難しそうに唸った。
「昔から何でもそれなりにこなせる奴だからなあ。運動も、勉強も」
 軽々と先を行く、そんなペンブロークの姿は何だか想像が出来るような気がした。
「じゃあ、お料理も?」
「簡単なフルコースは作れる」
「……お裁縫とかは?」
「……そこにあるレースたっぷりのクロスを縫ったのはあいつなんだ」
 器用すぎて逆に怖いわね、と零す私に、まったくだ、と彼もまた深く頷いた。

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