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雨匣浸

「私も昔、キャバクラのナンバーワンでねえ。歓楽街の男共は皆、酒よりも私に酔ったもんだ」
 店の説明をしながら娼婦長がそう言ったので、へえ、と私は短く驚きの声を上げる。
 自慢げな彼女の、仕事を誇る堂々とした口調は少し眩しかった。
「そうだ、新人のあんたに男を落とす良い手を教えてあげようじゃないか」
 あの男はああだった、こんな男がいた、と昔話に一人で花を咲かせていた娼婦長がふと口にする。
「良い手?」
「そう、これがあればどんな男もイチコロだ」
 そんなものがあるのかと興味を示した私に、彼女は笑みを深めて頷いた。
 それから咳払いをひとつして、丸い身体をくねらせる。
「……あたし、酔っちゃったみたい」
 赤らむ丸い頬。ばちばちと繰り返される瞬き。
 どうだい、と娼婦長が大きな胸を張ってみせたので、確かに彼女より先に酔いたくなるかもしれないと私は目を横に逸らした。

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