人が一生のうちにつける嘘には、実は制限がある。
500回。
多いようで、どんな小さな嘘でもカウントされてしまうのだから意外と少ない。
そして、私、恒常真(つねづね まこと)は今までに人が嘘をついた回数を見ることが出来る。
頭の上に、人それぞれ異なる数字が浮かんで見えるのだ。
と言っても、この能力はほとんど意味がない。何故なら、高校三年生である私の周りには、ほとんど全員の頭に500という数字しか浮かんでいないからだ。
例外は、たったの二人。私自身と、一宮裕也という少年だ。
彼の頭には、いつも0という数字が浮かんでいる。つまり、生まれてこの方嘘をついたことがないということだ。
だからこれは。この高校で嘘をつけるたった二人の、疑い合いの変わった青春ストーリー。
「いやいや。僕と恒常さんの間に青春なんて関係は微塵もないと思うけど」
……あ、数字が1になった。